片恋スクランブル
「男と朝帰りって本当?」
ガシャガシャ! 派手な音が厨房中に響いた。
落としちゃった……。
「橘さんっ!」
町田さんの甲高い声に、すみません!と大きな声で謝る。
慌ててプラスチックの皿を拾い洗い場へ運ぶ。
「花田さん~!」
半泣きになりながら、私は花田さんを睨んだ。
「朝から噂よぉ?社食のコが男と連れだって出勤してきたって……しかも、相手は最近我が社食に現れるようになったイケメンらしいってね」
連れだってませんし、朝帰りでもありません~!
必死で言い訳を並べる私に、花田さんが一方を指差した。
「ホラ、噂の出所が来たよ」
花田さんの指差す方向にいたのは……。
「白川さん?」
どうして彼女が、噂の出所?
困惑する私のすぐ近くまで白川さんはやって来て、フワフワの髪を一撫でさせたあと、クスッと笑った。
「昨夜はどうも」
「いえ、」
「あなた、てっきり八木さん目当てかと思ったら、御園生さんと付き合ってたの?」
彼女の口から出た言葉に、私は唖然としてしまった。