片恋スクランブル


「付き合ってる人がいるのに、余所見するなんて余裕ね。あんな優良物件捕まえといて。」

「物件?」

「それとも、彼はキープなの?」

白川さんが言っている言葉の意味が分からない。

物件とか、キープとか、男性に対して…… 。

「……失礼ですよね。そんな言葉を相手に使うなんて」

つい、こぼれてしまった。
……本音が。

「は?なに、ソレ。好い人ぶって!」

私の言葉に白川さんは真っ赤になって怒りだしてしまった。

美人が怒ると怖いって初めて思った。

「……とにかく、でしゃばらないでよねっ!」

白川さんは憤慨した様子で社食から出ていった。

「怖~!百年の恋も冷めるわねあれじゃ」

花田さんや、他のスタッフも白川さんの勢いに圧倒されてしまっていた。

でも。

彼女の不安が、少し分かった。

昨夜の菅谷さんと、八木さんのことが気になって仕方ないんだと思う。

私も、同じ気持ちだから。

あの時の二人の間には、入り込めない雰囲気があったのは事実で。

やっぱり、八木さんは、菅谷さんの事を好きなんだと思う。
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