片恋スクランブル
「舞夏ちゃん、先に休憩はいったら?」
花田さんが声をかけてくれて、私は少し早めに休憩に入った。
10時過ぎたらランチの支度でバタバタするから、下ごしらえが終わった時点で交代で休憩に入るのが、社食部の通例。
ラウンジに行き、自販機でなにを買おうか迷っていると後ろから突然抱きつかれた。
「きゃあ?」
「橘ちゃん!」
「菅谷さん?」
背中側から、菅谷さんが笑顔で覗き込んでくる。
「昨日はごめんね、すっかり迷惑かけちゃって……」
「そんなこと……それより大丈夫なんですか?」
見たところ、顔色もいいし大丈夫そうだけど。
「平気よ。一晩寝たら大抵は大丈夫なの、私」
御園生さんの言った通りだ。よかった……。
「……ところで」
菅谷さんが声を潜めて、私を壁際に追いやる。
「なんか、御園生との事で噂聞いたんだけど」
経理にまで広まってるんだ。
白川さんの交流の広さにある意味感心する。
「なんか、誤解があるみたいで……」
私は菅谷さんに、昨夜の流れを要点だけかいつまんで話して聞かせた。
「そっか。……大丈夫だからね。八木くんにはちゃんと誤解だって話しとくから」
「はぁ」
ライバルといってくれて、そんな私の為に、親身になってくれる菅谷さんってホントに好い人だ。
それは、ホントにありがたいんだけど。
「御園生さんに今日は社食に来ないように伝えてもらえませんか?」
まさか、あっちの会社に迄広まることはないだろうけど。
こんな状態で彼が来たら、迷惑かけることになるし。
「うん分かった。任せて!」
早速携帯を取りだし、メールを打ってくれてるみたいだった。