片恋スクランブル
「でも、珍しいよね」
ポツリ呟きが、菅谷さんの口からこぼれた。
「なにがですか?」
「ん?あぁ、昨日のこと。私が飲みすぎてグダグダになるのはいつものことなんだけど……」
あれが、いつものことなんだ。
どうりで、御園生さん達落ち着いて対処できてたわけだ。
「御園生迄なぁんかピッチ早かったんだよね」
「御園生さんって、お酒強いんですか?」
「ザルとまでは、いかないけどね。つぶれたのは見たことないんだ」
「え、じゃあ。体調悪かったんでしょうか?」
「ううん、違うと思うよ。どっちかって言うと、やけ酒みたいな飲み方してたし」
やけ酒みたいな?
昨夜の様子を思い出して見るものの、全く思い出せない。
みんなと話しながら、楽しそうに飲んでいたとばかり。
「それに……」
菅谷さんが私をチラリと見る。
「それに?」
「ううん、いい。気にしないで?」
言葉の続きが気になったけど、菅谷さんはそれ以上なにも言わず、仕事に戻っていってしまった。
私も、カップココアを買い、少し急いで飲んだあと、社食に戻った。
結局その日のランチには御園生さんは現れず、八木さんともゆっくり話す余裕もなく慌ただしく時間が過ぎていった。