片恋スクランブル

彼の回りにいる、お洒落でキレイでいい香りがする女の子達。

片や三角巾にエプロン姿で、油と汗の臭いが染み付いた自分。

違いすぎるから。

「アイドルみたいなものですよ?見てるだけでイイみたいな」

「そぉ?」

納得してはいないだろうけど、花田さんはそれ以上何も言わなかった。



「お疲れ様でした。」

エプロンと三角巾を外し、調理場から出た後、私はドレッサールームに向かった。
この会社は女性社員に対して、とても優しい。

管理栄養士がいる社食に、女子トイレに併設されたドレッサールームとか。

先代の社長夫人の立案だとか。

愛妻家で有名な社長らしい、この会社のエピソードの一つ。

仕事を終えた後、私は必ずここに来ている。

調理場にいると、独特の匂いが身体に染み付くから。

少しでも、その匂いを消したくて。

両手を洗い、纏めてあった髪をほどいて、匂い消しのミストをふり、ブラシをかける。

服まで着替えるわけにはいかないから、いつもここまで済ませてから会社を出る。
あとは帰るだけなんだけど。
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