片恋スクランブル
彼の回りにいる、お洒落でキレイでいい香りがする女の子達。
片や三角巾にエプロン姿で、油と汗の臭いが染み付いた自分。
違いすぎるから。
「アイドルみたいなものですよ?見てるだけでイイみたいな」
「そぉ?」
納得してはいないだろうけど、花田さんはそれ以上何も言わなかった。
*
「お疲れ様でした。」
エプロンと三角巾を外し、調理場から出た後、私はドレッサールームに向かった。
この会社は女性社員に対して、とても優しい。
管理栄養士がいる社食に、女子トイレに併設されたドレッサールームとか。
先代の社長夫人の立案だとか。
愛妻家で有名な社長らしい、この会社のエピソードの一つ。
仕事を終えた後、私は必ずここに来ている。
調理場にいると、独特の匂いが身体に染み付くから。
少しでも、その匂いを消したくて。
両手を洗い、纏めてあった髪をほどいて、匂い消しのミストをふり、ブラシをかける。
服まで着替えるわけにはいかないから、いつもここまで済ませてから会社を出る。
あとは帰るだけなんだけど。