片恋スクランブル


まもなくアパートが見えるところで、携帯のメールの着信音が響いた。

御園生さんからだった。

『悪かったな、』

たった一言のメールだった。

あの噂の事、御園生さんの耳にまで入ったんだ。

菅谷さんみたく、八木さんに誤解されないか気にしてくれてのこの文面なんだろう。

余計な言葉のない、実直で、真っ直ぐで、御園生さんらしいメールだと思った。

御園生さんが悪いわけじゃないのに。

謝られると、逆に申し訳なくなる。

メールだけで返すのは、なんだか寂しい気がして、私は家に入ってから荷物を置いてすぐ御園生さんに電話を掛けた。

『おぅ』

携帯の向こうの御園生さんは、少し元気がない気がした。

「メール、ありがとうございます。」

『いや、こっちこそ悪かったな……大丈夫か?』

あまりにも殊勝な声音に、私は思わず吹き出してしまった。

だって、御園生さんのキャラじゃない。

『……なんだ?』

明らかに不機嫌な、御園生さんらしい声音。

「そっちの方が、御園生さんらしいですよ?」

『なんだそれ……心配して損した。』

電話の向こうでホッと息をつくのが分かった。

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