片恋スクランブル
『もしもし?』
「菅谷さん?橘です」
あの居酒屋で初めて菅谷さんに会った時、携帯のNo.聞いておいてよかった。
『どした?』
耳に届く優しい声音は聞いているとホッとした。
普段の元気な菅谷さんとは少し違う大人の女性の声。
「すみません、いきなり電話しちゃって」
『いいよ、大歓迎』
躊躇うことなく紡がれる菅谷さんの言葉は、いつも優しくて温かい。
「御園生さん……のことなんですけど」
『御園生?』
本人に直接は聞けなくて、でも気になっちゃって誰に相談しようか迷った時、菅谷さんが浮かんだ。
「さっき御園生さんと話したんですけど……元気なかったから、あの……この前、菅谷さんが話してた御園生さんの好きな人となにかあったのかって……」
『気になる?』
間髪入れずに返された言葉に、私は一瞬戸惑ってしまった。
気になる?
「気になる……っていうか、御園生さん私のことばかり気にしてくれて、でも自分の事なにも言わないし」
そういうの、気になるよね?誰でもそうだよね。
『大丈夫!アイツ見た目と同じで頑丈だから。』
「は?」
『ねぇ、橘ちゃん』
「……はい?」