片恋スクランブル



「……来るか?八木と会う約束をしてる」

「え?」

「仕事でアイツと会う約束をしてるんだよ」

「御園生さんの会社で?」

「いや、会社近くのホテルのラウンジでな」

……八木さんに会う。

私は御園生さんに頷いた。





あれから、酔っぱらってしまった菅谷さんと小幡さんをタクシーに乗せてから、私達は待ち合わせのホテルにタクシーで向かった。

「待ち合わせの時間は?」

「20:30」

携帯を開いて時間を確認すると約束の時間を15分過ぎたところだった。

「もう来てるんですよね」

ホテルに入り、ラウンジを見回す。

八木さんの姿は見えない。

「アイツが遅れるなんて珍しいな」

御園生さんはそう言いながら、近くのソファーに腰を掛けた。

私も、御園生さんの隣に腰かけ辺りを見回しながら、八木さんの来るのを待った。

「……白川さん?」

視界の端に見慣れた顔を見た気がした。

フワフワのウェーブがかかった髪が、角を曲がって見えなくなった。

「御園生さん、今白川さんが……」

隣の御園生さんに声を掛けたけれど彼に反応はなく、 一点を見たまま動かない。

「御園生さん?」

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