片恋スクランブル
「……来るか?八木と会う約束をしてる」
「え?」
「仕事でアイツと会う約束をしてるんだよ」
「御園生さんの会社で?」
「いや、会社近くのホテルのラウンジでな」
……八木さんに会う。
私は御園生さんに頷いた。
*
あれから、酔っぱらってしまった菅谷さんと小幡さんをタクシーに乗せてから、私達は待ち合わせのホテルにタクシーで向かった。
「待ち合わせの時間は?」
「20:30」
携帯を開いて時間を確認すると約束の時間を15分過ぎたところだった。
「もう来てるんですよね」
ホテルに入り、ラウンジを見回す。
八木さんの姿は見えない。
「アイツが遅れるなんて珍しいな」
御園生さんはそう言いながら、近くのソファーに腰を掛けた。
私も、御園生さんの隣に腰かけ辺りを見回しながら、八木さんの来るのを待った。
「……白川さん?」
視界の端に見慣れた顔を見た気がした。
フワフワのウェーブがかかった髪が、角を曲がって見えなくなった。
「御園生さん、今白川さんが……」
隣の御園生さんに声を掛けたけれど彼に反応はなく、 一点を見たまま動かない。
「御園生さん?」