片恋スクランブル

ドレッサールームで片付けを済ませて立ち上がった時、数人の女子社員が入って来た。

八木さんと同じ部署の女の子達だった。

彼女達は私と背中合わせで座り、化粧直しを始めた。

出そびれて、私はもう一度ブラシをバッグから取り出した。

髪をとかしながら、なんとなく後ろの女の子達のお喋りを聞いていた。

女の子達は私がいることなど気にも止めず、話続けている。

「今日の合コン、気合い入るよね!」

「そりゃ、八木さん来るからねぇ」

八木さんの名前が出てきた事に、それまでボンヤリ聞き流していた私は意識を彼女達の会話に集中させた。

「珍しいよね、八木さんが合コンに来るなんて」

「美香がどうしてもって頼み込んだらしいよ」

美香……受付嬢の白川 美香さんだ。

新卒で春に入社したばかりの、子で色々な課の男性達の間で噂になっているとても可愛い女の子だ。

「美香も狙ってたんだ?」

「狙うっていうか、八木さんが美香に惚れてるって噂だけど」

「え~?なにそれ知らないよ」

高めの笑い声が、ドレッサールームに響く。
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