片恋スクランブル
私達が茫然と見ているその目の前で、
白川さんの白く細い指が、八木さんの顔の輪郭をなぞり、
指先にキラキラ光るラメ入りのピンクのマニキュアが、八木さんの唇に触れて、
背の低い彼女が背伸びをして、両腕を八木さんの首に回した。
徐々に近づいていく、白川さんの顔を避けようともせず、
八木さんは、自ら近づくこともしなかったけれど、
私には、白川さんの唇を八木さんが待っているようにさえ見えてしまった。
見たくないのに。
見たくないのに、目の前でまるで映画のワンシーンのように、視界一杯に広がり背けることもかなわない。
動揺する私に見せつけるように
彼女の唇が、
八木さんの、唇に重なった。
触れたのは一瞬。
白川さんの唇が、八木さんの耳元で艶かしく動いたのが見えた次の瞬間……
八木さんは、乱暴に白川さんの体を壁に押し付け、噛みつくように彼女の唇を奪った。
しがみつくように八木さんに抱きつく彼女の腰を抱き寄せ、深く……何度も何度も、二人はお互いの唇で愛撫を繰り返した。