片恋スクランブル


御園生さんの怒鳴るような呼び掛けに、驚き私は足を止めた。

肩を掴まれ、無理やり向き直らされて嫌でも御園生さんに泣き顔を晒す羽目になる。

「御園生さん?」

「俺はっ、」

痛い位に肩を掴まれていた。

でも、動けなかった。

肩の痛みを堪えて、目の前の真剣な御園生さんの顔をただ私は見ていた。

「……悪い」

言葉と同時に、彼の手の力が抜けて私は解放された。

「御園生さん……?」

もう一度彼を呼んだ。

「……アイツのことだから、きっとなにかワケがあるんだ。」

ワケ?

「言ったろ?いっつもヤな女に引っ掛かるんだ。そしていつもアイツだけが傷つく。」

八木さんの事を心配してるんだ。

御園生さんだって、さっきのことなにも思わなかったワケじゃない。

いつも恋に傷付いている親友の心配をしてるんだ。

私、自分ばかりが苦しいと思ってた。

御園生さんも苦しいんだ。

ちゃんと考えよう。

八木さんも、菅谷さんも、御園生さんも、誰も苦しまなくてすむ答えを。

なにが正解か、不正解か分からないけど。

でも、苦しみがそこに存在するだけの恋愛なんて悲しい。

苦しみがあっても、幸せだと感じられるものじゃないと……、

私はやだよ。
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