片恋スクランブル
けれど。
思ったより、皆の反応はなかった。
なぜなら、さらにそれを上回る話題が一部の社員の間を駆け抜けたから。
*
「八木さん、ついに白川と付き合い始めたみたいよ~!」
ランチタイム。
窓際の女子社員の一人が声を低くして言った言葉は、少なくともその場半径5メートル辺りまでは聞こえていた。
彼女が元々よくとおる声の持ち主なのか、本人は小さく言ったつもりが、興奮していた為に大きくなっていたのかは分からないけど。
私は彼女達がいたテーブルの隣を片付けていたため、なんなく聞こえてしまった。
「なにそれ~!ガセじゃないのぉ?」
「でも、最近よく一緒にいたよね」
「これ、美香本人からの情報だから」
「なにそれ?」
彼女達の会話は筒抜けで、私はテーブルを片付けながら、回りを見回し菅谷さんがいないか確認した。
「美香昨日と同じ服できたからさ、からかったら……」
「たら……?」