片恋スクランブル
ランチタイムが終わって一息ついたところで、私は菅谷さんにメールをした。
会って話をしたかった。
『ゴメン!今日は残業になりそう』という菅谷さんの返事に、終わってからでいいからとなんとか約束を取り付けた。
菅谷さんは噂を聞いてる。
もし、一人で考え込んでるなら一緒に話したい。
二人なら苦しい思いもきっと、半分にできると思うから……。
だから、二人でお酒でも飲みながら話したかったんだ。
菅谷さんと待ち合わせをした場所は、いつもの居酒屋ではなく、通りから路地3つ分奥にある落ち着いた雰囲気のバーだった。
照明を落としてある事と、店内がグリーンを仕切りに使い二人がけのソファーと小さなテーブルで個室風にしてあることで、知り合いがいたとしても気付かないだろうなと思った。
私はカウンターに座り、菅谷さんが来るのを待っていた。
「飲み物は……なにになさいますか?」
初老のバーテンダーが、声をかけてくれた。
「えと、なにか軽めのカクテルを……」
普段ビールや酎ハイを飲むくらいでお酒に詳しくない私は、こういう店で何が注文できるか分からなかった。
「では、少し甘いフルーツのカクテルを」
穏やかな笑顔と声音は、相手の気持ちを和ませてくれる。
この店の雰囲気に合っているなと思った。