片恋スクランブル


酔いが一気にさめた。

グラスをおいて、八木さんに近寄る。

「……八木さん?」

八木さんが突っ伏したテーブルの前にはウィスキーを飲んだのか、大きな丸い氷が入ったグラスがいくつも置いてあった。
こんな無茶な飲み方をする人だった?

前に一緒に飲んだときは、全然酔ってなかったっていうか、お酒あまり飲んでいなかった気がする。

「八木さん」

もう一度声をかけてみると、彼はゆっくり頭を起こした。

「……?」

視点が定まらない様子の八木さんに「橘です」と名乗った。

「あぁ……社食の」

隣の空いている席に腰掛け、バーテンダーにお水を頼んだ。

「八木さん、お水……」

「ありがとう」

八木さんは力なく笑い、グラスを受け取り、コップ1杯の水を飲み干した。

「大丈夫ですか?」

「……ん?」

全然大丈夫じゃないよね。

顔も赤いし、目だって虚ろだ。

一体どうしてこんなところで、こんな風になってしまったんだろう。

「水、おかわりした方がいいですよ?」

再度水を勧め、飲み終わったのを見てから八木さんに話しかけた。

「八木さん」

「……ん?」


< 81 / 159 >

この作品をシェア

pagetop