片恋スクランブル
酔いが一気にさめた。
グラスをおいて、八木さんに近寄る。
「……八木さん?」
八木さんが突っ伏したテーブルの前にはウィスキーを飲んだのか、大きな丸い氷が入ったグラスがいくつも置いてあった。
こんな無茶な飲み方をする人だった?
前に一緒に飲んだときは、全然酔ってなかったっていうか、お酒あまり飲んでいなかった気がする。
「八木さん」
もう一度声をかけてみると、彼はゆっくり頭を起こした。
「……?」
視点が定まらない様子の八木さんに「橘です」と名乗った。
「あぁ……社食の」
隣の空いている席に腰掛け、バーテンダーにお水を頼んだ。
「八木さん、お水……」
「ありがとう」
八木さんは力なく笑い、グラスを受け取り、コップ1杯の水を飲み干した。
「大丈夫ですか?」
「……ん?」
全然大丈夫じゃないよね。
顔も赤いし、目だって虚ろだ。
一体どうしてこんなところで、こんな風になってしまったんだろう。
「水、おかわりした方がいいですよ?」
再度水を勧め、飲み終わったのを見てから八木さんに話しかけた。
「八木さん」
「……ん?」