片恋スクランブル
そんな私の気持ちを察してくれたのか、八木さんが重い口を開いた。
「橘さんには迷惑かけたし、話すよ……」
大きな溜め息のあと、八木さんがそう言った。
「八木さん……」
ソファーに座り直した私の前に、八木さんは温かいココアを入れたカップを置いた。
「好きなんだよね?ココア」
「え?」
八木さんが私の好きなものを知ってくれていることに驚く。
「菅谷が嬉しそうに話してたから。」
あっさり謎はとけて、やっぱり菅谷さんがらみだから、つい笑ってしまった。
「菅谷、橘さんのこと滅茶苦茶気に入ってるからね。……思わず嫉妬するくらい」
舌先を出して、苦笑する八木さん。
菅谷さんへの想いを告白した八木さんは、私に対して素直に菅谷さんへの想いを口にしている。
まだ少し胸のはしっこが痛んでる私の想いなんて知りもしない八木さんに、私はただ同じように苦笑した。
でもいい。
こんな風に素直な八木さんが見れただけでも、嬉しいから。
「白川さんは、菅谷の高校時代の後輩らしい」
自分にはコーヒーを入れて、それを少しずつ口にしながら、八木さんは話始めた。
「菅谷と俺は、高校が一緒なんだ。あの頃の菅谷も今みたいに明るくてカラッとした性格で、楽しいヤツだったよ」
過去を思い出して幸せそうに笑う八木さんの顔が、徐々に曇り始める。
「今と違うのは、すごく太っていた事と、顔のパーツかな」
昔太っていたけどダイエットして変身したっていう話は女の子ならよくある話だ。
でも……顔のパーツ?
言葉の意味が分からなかった。
「……菅谷は整形したんだ」
「整形?」
可愛らしいパッチリとした二重瞼に小さな唇や細い顎。
愛らしい女性だと思う彼女の顔が整形されたもの?
にわかに信じられなくて、戸惑う。
「男の俺には分からないけど、菅谷は凄く気にしていたみたいだった」
「高校卒業後に地元から離れた大学に入る前、整形した。」