片恋スクランブル
嘘をつく痛み
「……舞……夏?」
玄関の扉を開けた瞬間、私の目に御園生さんの姿が飛び込んできた。
御園生さんは驚いた表情のまま私をじっと見つめていた。
「御園生さん……?」
声をかけるとハッとして、私から目をそらしてしまった。
どうしたんだろ……?
スーツ姿だから、多分仕事帰りだと思った。
こんな時間まで、仕事なんて大変……。
「橘さん、下まで送るから…………」
サンダルを引っかけ、上着にそでをとおしながら出てきた八木さんは、御園生さんを見つけて驚いた表情をした。
「御園生……」
八木さんが御園生さんの名前を呟いた次の瞬間、御園生さんが私の横をすり抜け、八木さんに向かっていった。
直後激しい音が辺りに響く。
……え?
なにが起こったのか分からなかった。
振り向くと、玄関に肩で息をしつつ立ち尽くす御園生さんと、その先の廊下に倒れ込む八木さんの姿が見えた。
「八木さん!」
倒れている八木さんの頬が、見る間に赤く腫れていく。
わけが分からないまま、立ち尽くす御園生さんの横をすり抜け、八木さんに近付いた。