片恋スクランブル
「じゃあ、八木と二人きりだったわけだ」
「え、まぁそうですね」
彼の言葉に、素直に答えた。
実際そうだったのだから、他に答えようがないけど。
「受付嬢の事はうまくいったのか?」
「白川さんには近いうちにちゃんと話をしてくれるそうです。そしたら……」
そしたら、晴れて八木さんは菅谷さんへの想いを告白できる。
らん……と何度も苦し気に呼ぶ八木さんの声が思い出されて、胸が軋む。
「舞夏?」
御園生さんの声に我に返り、慌てて彼を見て、一生懸命笑った。
「八木さん、ちゃんと告白してくれるそうです」
「そうか……」
御園生さんもホッとした表情を見せた。
「……よかったな」
御園生さんの大きな手が、私の頭をポンポンと叩いた。
よかった……。
よかったと……思う。
これで八木さんも、菅谷さんも苦しまなくていい。
二人幸せでいられる。
鳩尾の辺りが、シクシクと痛み涙が込み上げてきた。
やだ。
まだ私の中の浅ましい感情が波を立てる。
静かに、消してしまいたいのに。
二人の事を、淀んだ心で見たくないのに。
こんな自分は嫌いなのに。