片恋スクランブル


「じゃあ、八木と二人きりだったわけだ」

「え、まぁそうですね」

彼の言葉に、素直に答えた。

実際そうだったのだから、他に答えようがないけど。

「受付嬢の事はうまくいったのか?」

「白川さんには近いうちにちゃんと話をしてくれるそうです。そしたら……」

そしたら、晴れて八木さんは菅谷さんへの想いを告白できる。

らん……と何度も苦し気に呼ぶ八木さんの声が思い出されて、胸が軋む。

「舞夏?」

御園生さんの声に我に返り、慌てて彼を見て、一生懸命笑った。

「八木さん、ちゃんと告白してくれるそうです」

「そうか……」

御園生さんもホッとした表情を見せた。

「……よかったな」

御園生さんの大きな手が、私の頭をポンポンと叩いた。

よかった……。

よかったと……思う。

これで八木さんも、菅谷さんも苦しまなくていい。

二人幸せでいられる。

鳩尾の辺りが、シクシクと痛み涙が込み上げてきた。

やだ。

まだ私の中の浅ましい感情が波を立てる。

静かに、消してしまいたいのに。

二人の事を、淀んだ心で見たくないのに。

こんな自分は嫌いなのに。


< 99 / 159 >

この作品をシェア

pagetop