デキる女を脱ぎ捨てさせて
「もしかしてゴミは好きな時間にいつでも捨てに行けますか?」

 週二回、朝8時までに出す。とかではなくいつでも出せるとすごく楽なんだけど。

「それは、、もちろん。
 面白いね。
 そんなところに食いつく女性は初めてだ。」

 言葉の端に僅かな胸の痛みを感じつつ、リビングの方へ足を向ける彼の後に続いた。

 彼は「こっちの方が気にいると思うよ」と言ってカーテンを開けた。

「わぁ。」

 眼下に浮かぶ光の海……いや、川か。
 もう別世界過ぎて目が眩む。

 窓から見える景色はあのいつか見せてくれた地元の風景に似ていた。

 散りばめられた輝きはビルの光が青々とした清々しい山々で車の行き交う道路が川。
 そう。あの風景そのものだった。

「ね、手放すには惜しいだろ?」

 いつの間にか私の後ろに立っていた倉林支社長に後ろから腕を回されてドキリとした。

「倉林支社長?」

「崇仁だ。」

「えっと、どうしました?」

 優しく包まれるように腕を回されて雰囲気に飲まれてしまいそうだ。

 あれ。どこで間違えた?
 だってそんな雰囲気、どこにも………。
 これが大人の誘い方なの?

 近過ぎる距離に心臓は壊れそうなほどに音を立てた。

 別世界過ぎて男性の部屋へ気軽に行っていいものじゃないなんて当たり前のことが思いつかなかった。

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