デキる女を脱ぎ捨てさせて
 いい男の一人や二人と言われて一番最初に浮かぶのは………馬鹿みたい。
 陽真の言葉に傷ついていたのに、倉林支社長に会いたいなんて思ってる。

 唯一の居場所だと思っていた陽真の隣に先約がいてショックだった。
 私を誘った後に他の女の子と付き合えるような……。

 倉林支社長に会いたい。
 分不相応だって分かってる。

 分かってるから今日だけは彼の大きな胸に抱かれて甘やかされたい。
 また軽い女だって思われちゃったって笑って、笑い事じゃないよって叱って欲しい。

 本当に馬鹿だ。
 所詮、彼にとっては遊びなのに。

 消えてくれない倉林支社長の顔を頭を振って何度も追い出そうとする。

 最後までは至らなかった彼との一夜。

 あの時は怖さに震えたくせに今では最後まで済ませてしまって思い出にすれば良かったのにって身勝手な思いまで首をもたげる。

 不毛な相手なのに。
 向こうも遊びのつもりだったわけで同罪だからいいのかな。

 陽真にさえ経験豊富だと思われるような私だ。
 大切に取っておくことはない。
 彼と、倉林支社長とそうなってしまえば良かった。

 けれどもうそれさえも叶わないなぁ。

 ぐちゃぐちゃの思考回路を停止させたくてベッドに潜り込んだ。

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