デキる女を脱ぎ捨てさせて
 頭を振りながらよろよろとよろめいて力なく蓋の閉まった便座の上に腰を下ろした。

 本社で……ってこの人達だけじゃなく……。
 そんな…彼は必死に……。

「居場所なくたって本社勤めしてもらうわ。
 大して仕事しなくたって社長がどうにかしてくれるでしょ?」

 散々、大盛り上がりで話していた何人かの内の一人が心配そうに言った。
 まだ少しは良心のありそうな人だ。

「こんな話してて大丈夫?
 彼、来てるんでしょ?」

 そうだよ。
 聞こえなきゃいいってわけじゃないけど、何も出張に来ている時に話さなくても……。

 そんな心配は彼女達には皆無のようだった。
 笑い飛ばして楽しそうに言った。

「大丈夫よ。彼は二階だし。
 それに女子トイレには入らないでしょ?」

「それはそうね。」

「アハハハハハッ。」

 我慢の限界はとうに過ぎていて、あなたが婚約者なんて認めない!と飛び出してやりたかった。

 しかしその思いをグッと堪えて押し留めた。

 言いたい、言ってやりたい。
 言いたいことは山ほどあって、けれど支社長の立場を悪くするようなことは言えなかった。

 散々噂話をして、化粧直しにでも来ただけなのか、彼女達は去って行った。

 本社に彼の味方は誰もいないのかな。
 悔しくて悔しくて泣いてしまいたかった。

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