デキる女を脱ぎ捨てさせて
「さて。どこに行こうか。
 生憎、この辺りは詳しくないんだ。」

「普段どうされてるんですか?」

「自炊。」

「自炊?
 意外過ぎます。」

「そう?一人が長いからね。」

 そうだとしても。

 誰だろうと誘えば喜んで食事をご一緒する女性はたくさんいそうだし、なんなら喜んで作りに行く女性だっていそうだ。

 自分でって、かなり意外だった。

「私の行きつけで良ければ。」

「それは興味あるな。」

「……ガッカリされても知らないですよ?」

 会社からほど近い……と言っても車で近いというだけ。
 田舎は基本が車移動だ。
 車に乗り込んでお店へと案内する。

 車を運転するのが好きだと言う彼に甘えて助手席に座らせてもらった。

 思いの外、普通の車で違った驚きがあった。

 堅実な人なのかな?と思うと……って、いやいや。
 イケメンが乗れば高級車も様になるし、廃車寸前のボロでもオシャレかアンティークにでもなるんだろうな。

 感慨深い気持ちでいると車は駐車場に到着した。
 車から降りて店の前まで来ると彼は興味深げに店の外観を眺めた。

「珍しいですか?」

「いや。そんなことはないよ。」

 微笑んだ倉林支社長の先を行き『だんだん』と書かれたよく言えば趣きのある暖簾をくぐる。

 大衆居酒屋なんてお坊ちゃまには敷居が高かったかしら。


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