デキる女を脱ぎ捨てさせて
 気もそぞろに会話もままならない状態でマンションへ着いてしまった。
 何度来ても豪華でそれでいて上品なマンションにおののく暇さえない。

 彼の後について部屋に入った。

「何か飲むかい?」

「いえ。」

 どうしよう。
 全然頭がついていかない……。

 だって今、どういう状況?

「どうしてソファに座らないの?」

 私ばかり戸惑っていて彼は至って普通だ。
 そりゃここは本社に来る時にしか来ないかもしれないけど彼の家で、だからって……。

 クスクス笑われて居た堪れない。

 目の前には高級そうなソファ。

 安易に座れないし、それは高級そうだからって理由だけじゃなくて………。

「ほら。こっちにおいで。
 話も出来やしないじゃないか。」

 優しく諭すように甘やかすような声をかけられて言葉をこぼした。

「話……。」

「うん。話。それとも話をするのは嫌?」

 フッと笑った彼の方が私へと歩み寄った。

「何を笑っているんですか?」

 つい不満が口を出た。

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