デキる女を脱ぎ捨てさせて
「ん?言ってなかった?
 俺、花音のこと離したくないくらい好きだけど?」

 嘘……でしょ?
 嬉しい言葉のはずなのに愕然と彼を見つめた。

「ちょ、っと待ってください。
 今のタイミングで言います?」

「ごめん。
 前に言ったつもりだったんだけど。」

「前?前って……。」

 可愛いとか、素敵な人だとか。
 軽い言葉はたくさん言われて来たけれど。

 好きだなんて言われたことはない。
 好きだなんて………。

「花音が欲しいって言ったよね?」

 彼の言葉に再び愕然として、つい強く言い返した。

「それじゃ分からないですよ!
 だって体だけって、体だけって思うじゃないですか!!」

 そのことで悩んで、それでもいいって覚悟して……。

「そっか。ごめん。
 そうなんだ。それで……。
 うん。今なら分かるよ。
 俺も花音に言われてすごく嬉しかったから。」

「え……。」

 私は自分の気持ちを彼に伝えていない。
 正確には、彼には伝わっていないはずだ。

 夜中、目を覚ました私は隣からスースーと整った寝息が聞こえて夢見心地のまま言葉をこぼした。

「好きです。崇仁さん。」

 言葉にすると簡単な一言。
 けれど本人には言えないまま。

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