デキる女を脱ぎ捨てさせて
「ひと目見た時から花音のことしか考えられなくなった。」

 ん?どこかで聞いたことある台詞。

「倉林支社長?
 やっぱりからかってますよね?」

「ハハッ。ごめん。
 あの時は心臓が止まるかと思ったよ。
 でも花音も。
 また倉林支社長になってる。」

「は…はい。ごめんなさい。」

 倉林……いえ、崇仁さんは手厳しい。
 親にもらった名前を!と、言ったせいなのか、崇仁さんと呼ばれることにすごくこだわって言い間違えを許してくれない。

 倉林支社長だって間違いではないのに。

「まさか君にあんなことを言われるなんて、と思ってね。」

「あんな?」

 彼の思わぬ言葉に当時を思い出す。
 まぁ、配属初日の人に言われれば驚くかな?
 そんなことを思い浮かべた。

 しかし彼の続けた言葉は想像とは違っていた。

「嘘だと分かっていても誘われて胸が高鳴ったのは初めてだ。
 言わされただけと分かってたのにね。」

「え……そんな時から?」

 それって私のこと気にしてくれてたってことだよね?
 信じられない気持ちでいると彼は私の髪を手に取り弄びながら続けた。

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