デキる女を脱ぎ捨てさせて
 しばらく抱き合っていると彼はゆっくりと体を離して話し始めた。
 それは少し改まった口調で今までの甘い雰囲気とは違ったものだった。

 さきほどの打ち明け話とも違う、何か予感させるような雰囲気を感じさせた。

「こんな関係になってから言うのは卑怯者のすることだと思うけど。」

 彼の言葉にキリキリと胃が痛くなる思いがした。
 とうとう最終宣告が言い渡されるのかと思うと胸が抉られる思いがした。

 結婚は出来ない。
 それでも恋人で居てくれる?

 もしくは結婚願望はないけれど結婚は婚約者とするつもりだから君は愛人で。とか。

 彼を信じていないわけじゃないし、好きだと言ってくれた言葉は嬉しかったけれど。
 自分の立場はわきまえているつもりだ。

 もしかしたら自分の生い立ちを話してくれたのも「だから愛人で」と言いたかったのかもしれない。

 崇仁さんはもう一度私を抱き寄せて肌を触れ合わせた。
 素肌を重ねることがこんなにも愛おしいと思うのだと彼と過ごして初めて知った。

 でも今はその温もりが切ない。
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