デキる女を脱ぎ捨てさせて
 私だって本当は彼が最初で……最後の人であって欲しい。

 けれどどうしても私と彼との間には大きな隔たりがある。
 彼との未来には添い遂げるという未来がない。
 彼には結婚願望はないのだから。

 私の切ない気持ちは彼に届くことはないし、言うつもりもなかった。

 彼は抱き寄せては体を離して話し出す。
 目を見つめて伝えたいことのようだ。

 それなら抱きしめ直さなければいいのに。
 余計に……愛おしくなって切なくなるから。

 私の気持ちなど知らない彼は同じ口調で続けた。

「いつも花音の気持ちを確かめずに狡猾な方法で逃げられないようにして来た。
 けれど……。」

「けれど?」

 言い淀んだ彼に先を促した。

 つらい話なら早く終わらせて欲しい。
 覚悟は……出来ているつもりだ。

「元彼とは良かったのかい?
 その、こんなことを言ってはなんだが、君の貞操が守られていたことが嬉しくもあり、驚きでもあったというか………。」

 しばしの沈黙の後にやっと理解できた私は急速に怒りが溢れそうになった。

「崇仁さんも私をそういう女だと?」

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