デキる女を脱ぎ捨てさせて
「待って待って。違うんだ。違う。
 花音は可愛らしくて、その、それらは経験がないからだってことも多分にあるって君に触れてよく分かった。
 だからこそあの時の君は今まで以上に危うくて、その、そんな君を元彼に差し出した自分の馬鹿さ加減を呪ったというか……。」

 一気にそこまで言うとため息をついた彼が白状するように言った。

「私は花音が私の暴挙のせいで元彼への曖昧だった気持ちを確かなものに変えさせてしまったのだと思ったんだよ。」

「え……。」

 俺ではなく私と話す彼はどこかつらそうに話している気がして、顔を上げた。

 居心地が悪そうな表情を浮かべて苦笑した崇仁さんはそれでも目をそらさなかった。

「自分では君に気持ちを伝えたつもりでいたからね。
 私の気持ちを聞いて元彼を選ぶ君に…。」

「選ぶって、だって。」

 やっと自分達にすれ違いがあったことに気づいて呆然とした。

 箕浦さんが言ってくれたみたいに本当に私の為を思って言った台詞だったの?
 自分より元彼の方がいいだろうって……。

「避けられていたのはそのせいだって思ったんだよ。
 元彼への気持ちを確かなものに変えさせてしまったからだと。」

 切なそうな顔をする彼にこちらも胸が痛くなった。

< 180 / 214 >

この作品をシェア

pagetop