デキる女を脱ぎ捨てさせて
「そ、そんなことより、お二人はもう食べてくださいました?
 あまごのパスタ。」

 箕浦さんに相談に乗ってもらっていたアレンジパスタが完成して会社の社員食堂で食べられるようになった。

 このことについては既にニュースやテレビ番組にも取り上げられるほどの注目ぶりだ。

 フォレストの全面バックアップで考えられたパスタはイケメン一流シェフ考案と大々的に売り込みがされ、箕浦さんは話題に華を添えてくれた。

 倉林支社長も箕浦さんと一緒に並んでコメントの一つでも言うのだと思っていた。
 相乗効果でますます注目を浴びそうだ。

 何と言ってもイケメン二人な訳だし。

 しかし彼は頑なに「私は表に立つ人間ではありませんので」と断ったらしい。

 がっかり顔の私に箕浦さんはこっそりと耳打ちをした。

「ジンは元来、注目されるのが苦手なんだよ。」

 箕浦さんは今回のパスタを足がかりに山野に自分のお店を持つのだという。
 オーナーではなく箕浦さん本人が腕を振るうお店。

「子どもが小さくて自然豊かなところで育てたかったんだ。
 大きな犬を飼って伸び伸びと、ね。
 ジンは俺の夢を叶えてくれた。」

 優しい微笑みを浮かべていた箕浦さんが苦笑した。

「本人はそんなこと微塵も思っていないようだけどね。」

 箕浦さんの視線が私の後ろに移ってすぐに、私の背中に大きな温もりが覆い被さった。
 それだけで簡単に私の体全体を包み込んでドキドキと鼓動を速めさせる。

「ジン。花音さんが恥ずかしくて死にそうって顔してる。」

 箕浦さんが指摘してくれたのに崇仁さんは気にも止めないで……。

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