デキる女を脱ぎ捨てさせて

「花音がいてくれたから俺もここまで来られたんだよ。」

　なんて言っていいのか分からなくて無言でいると彼は言葉を重ねた。

「本当だよ。
　頑張れたのは花音と一緒に……いいや、君に連れられて来たかったからだよ。
　あの時をやり直せるかい？」

　微笑んだ崇仁さんに私は首を横に振った。

「やり直さなくても……。
　今が幸せだからいいんです。」

「ハハッ。うん。そうだね。」

　彼の隣は夢みたいに幸せで。
　例え本当にひと時の夢でも構わない。

　彼に結婚願望がなくて結婚できなくても彼の側にいたかった。
　彼の側にいられれば何もいらない。

　不貞腐れていた心も彼に「俺には花音が必要だ」と言われるだけで溶かされていく。