デキる女を脱ぎ捨てさせて
「仲違いした知り合いの子ども同士が知り合うだなんて悪縁としか思えないわ。
 まして付き合うだなんて穢らわしい。」

 こめかみを押さえて頭を振る母は辟易しているようだ。
 何か言い返そうと身を乗り出した私の手を彼はテーブルの下でそっと握った。

 まるで自分に任せておいて欲しいと言われた気がして、私はもう一度深く座り直した。

 母はひとたび口を開いたせいか、堰を切ったように話し続けた。

「田舎からお嫁に行った知り合いは幸せでなかったわ。
 みんな羨んでいたのに、痩せ細って田舎に帰って来て。」

 つまり、それが崇仁さんのお母さんということ……?

 母は続けた。

「息子は育てても取られて身重な体を抱えて体調を崩して。
 ずっと放っておいたくせに長男に芽が出ないからって放っておいた弟を奪って。
 芽が出ない長男は見放されたっていうじゃない。」

 何も知らないお母さんまで崇仁さんをそんな風に……。
 ギリリと奥歯を噛み締めて文句を言いたい気持ちを押し殺した。

 もう一度、彼に手を撫でられるように握られて、息を細く吐いた。
 彼の方が自分と親のことまで悪く言われてつらいと思うのに、そう思うと申し訳ない気持ちになった。

 失礼なことを言い続けている母は「そんな人と付き合って幸せになれるわけがないわ」と締めくくって口を閉じた。

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