デキる女を脱ぎ捨てさせて
倉林崇仁Side
松嶋から「せっかく合併させるんだから側に配属させて損はない」と言われ、彼女を自分と同じ課に渋々配属させた。
西村花音。
妙齢のしかも独身の女性を側に置くなど辟易するのが目に見えていた。
しかし松嶋の勧めだ。
間違いはないだろう。
それに、履歴書に写る彼女は男に不自由していなさそうな雰囲気を伺わせており、そもそも心配には及ばないのかもしれない。
ただ、松嶋の「西村に言い寄られても困らない」という一言が心に引っかかっていた。
あいつが意味深なことを言う時は碌なことがない。
ま、それも考え過ぎなのかもしれないが。
「森野電機から来ました。西村花音です。
よろしくお願いします。」
配属された西村花音本人は良くも悪くも履歴書通りの美人だった。
男性社員は分かりやすく目の色が変わった。
しかし親しみやすいというよりも近寄り難い美人なのが功を奏しているらしく、どうやら皆アプローチ出来ずに遠巻きに色めき立つ程度に収まっている。
違った意味で辟易する羽目にならなければいいのだが…。
彼女は俺に対しても変に色目を使わないどころか、どこか冷めた対応をした。
そのことについては杞憂に終わったことに安堵していた。