デキる女を脱ぎ捨てさせて
 倉林支社長はといえば今日は朝から工場の方に行っている。
 何かトラブルがあったらしい。

 待っていた都築くんから連絡があり、指示通り資料を直す。

「サンキュー!
 助かったよ。神様、仏様、西村様!」

 本当、調子いいんだから。

「そういうのはいいですから、後は送っておけばいいんですね?」

『そう!よろしくね!
 俺、このまま直帰するから、西村ちゃんも終わったら気をつけて帰ってね。』

「はい。お疲れ様です。」

 関連メールに返信して、資料も共用フォルダに保存した。

 もう終わる。早く。早く。
 帰れると思うと急に気持ちが焦る。

 毎日残業なんてまるで倉林支社長と二人になりたいから、と思われても堪らない。

 帰り支度を済ませて職場を出た。
 急いでエレベーターに飛び乗って裏口へ急ぐ。
 守衛室の方に向かっているとツカツカと歩く足音が聞こえた。

 一足遅かったか……。

 近づく足音に慄いて咄嗟に植木の後ろに身を潜めた。
 何事もなく無事に帰路に着きたい。

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