デキる女を脱ぎ捨てさせて
「西村さんも都築の尻拭い?
 自分で最後まで処理しなきゃいけないな。
 明日も説教だ。」

 他人事ながら想像して身震いをする。
 仕事にはとことん厳しい人のようだ。

 私は倉林支社長の言葉に引っかかりを覚えて質問をした。

「西村さんも、ということは、倉林支社長も、ですか?」

 都築くんは朝一番で倉林支社長に鬼のように叱られていた。

 居た堪れなくて何人もの人が休憩室に逃げ込んだのを横目に確認しつつも私は恐ろしさから動けなかった。

 動けなかったものだから最初から最後まで都築くんと同じ気持ちで叱られた気分になった。

 叱りつつも尻拭いはしてあげるんだ。
 いい上司ではあるのかな。

 だとしても、あんな風に叱られないように仕事頑張ろう………。

 決意を新たにしていると、倉林支社長は私の質問に首肯して言葉を重ねた。

「まぁ。でも都築のお陰で用意したものが無駄にならずに済んだな。」

「用意したもの?」

「職場に戻って待っていて。」

 守衛室に向かう彼の背中を見送って頭には疑問符を浮かばせた。
 言われた通りにエレベーターを押して急いで閉ボタンを押す。

 一人のエレベーターにホッと息をついた。

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