デキる女を脱ぎ捨てさせて
 電話を切るとため息を吐いた支社長が冷たく告げた。

「このような電話はすぐ私に変わるように。」

 そんな言い方しなくても……。
 私の対応が間違っていたとでも言いたい言い方だ。

 別に労って欲しいわけでも、嫌な電話だったねって共感したいわけでもない。

 だからって!

「ですが、倉林支社長……。」

 意見したい言葉は氷よりも冷ややかな彼の眼差しを向けられて声を詰まらせることとなった。

「いいから!いいから変わるんだ!」

 声を荒げた倉林支社長の形相に圧倒されるとともにこんな仕打ちを受けると思ってもみなかった私は言葉を失った。
 目には涙が溜まりそうになって顔を俯かせた。

 再びため息まで吐かれて胸がジクジクと痛んで悲鳴を上げた。

 彼は背を向けると小さく告げた。

「ついてきたまえ。
 君を連れていくのが先方のご希望だ。」

「え………。」

 私の方を見もしない彼に余計なことをしなければ良かったと泣きたくなった。

 今、一番一緒に居たくない人と行動をともにしないといけないなんて。
 泣きたくて、けれど逆らうことも出来ずに「はい」と小さく答えた。
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