デキる女を脱ぎ捨てさせて
「まさか花音ちゃんだとは。」

 倉林支社長と二人きりの車内はお互いに何も話さない居心地の悪い雰囲気が続いた。
 雰囲気が明るく変わることもなく車が着いた先は農家のお家だった。

 招いたくせに招かれざる客という態度を取った人は昔からよく知るおじさんだった。

「あんたさんはどっか行っててくれんか。」

 倉林支社長に冷たく言うとおじさんは庭の奥へと歩いていこうとしている。

「しかし!」

 倉林支社長は食い下がって呼び止めた。

 気のない感じで振り返ったおじさんは冷めきった口調で倉林支社長に告げる。

「同じ田舎のもん同士で話したいこともある。
 部外者のあんたさんは邪魔なだけじゃ。」

 私は倉林支社長に頷いてみせた。
 倉林支社長がその場に立ち尽くして動けずにいる様子は見ていられなくて、それを振り切るようにおじさんの後を追いかけた。

「花音ちゃん。フォレストに入ったとは聞いておったが……。」

 おじさんは苦々しい顔をして話し始めた。
 私が知っているおじさんは陽気なおじさんで組合の会合でお酒が出ると踊り出して場を盛り上げるような人だった。

 こんな……フォレストの支社長に言い掛かりを付けるような人じゃない。

 ボンクラ息子だとか口汚い言葉をかけるようなそんな人じゃなかった。


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