デキる女を脱ぎ捨てさせて
「母の実家がこの辺りでね。」

「そうなんですね。」

 すごいな。昔の政治家も真っ青だね。
 よく言ったじゃない?
 政治家の地元に高速道路が通るって。

 企業のお坊ちゃんなら母の実家付近に会社を建てちゃうのね。

 あんなことがあった後で不謹慎だけど心の中で茶化さずにはいられなかった。

「好きだった母の田舎の過疎化が進み、寂しくなっていくことが耐えられなかった。」

 その理由を聞いて胸がトクンと高鳴った。
 この人は私が想像したような下世話な理由じゃなくどこか高等な考えがあったんだ。

「そこに会社を作ったら雇用が生まれ、って単純に考えていたよ。
 そこに働く人にも心はある。
 そんな簡単なことが抜け落ちていた。」

 雇用が生まれた、しかし自然が壊される。
 そこの葛藤もあるのだろう。

 苦悩する横顔は辛そうに歪んだ。

 私は小さい頃からここに住んでいて、それで……。
 頭の中におじさんの「悪魔に魂を売ってはならん」という言葉が巡った。

 目を静かに閉じて、そしてその目を開くと自分の気持ちを口にした。

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