デキる女を脱ぎ捨てさせて
　お昼休みも間近に迫った頃、外から帰ってきた都築くんが息抜きとばかりに話しかけてきた。

「西村ちゃん。今度、飲みに行かない？」

「何かいいことでもあったんですか？」

「その逆だよ〜。慰めて〜。」

　うなだれた都築くんに周りから厳しいヤジが飛ぶ。

「甘えるんじゃない。」

「これ見よがしに花音ちゃんを誘うな。」

　松山さんと河内さんの愛あるムチに私は笑った。
　都築くんはいつものごとくめげない。

「行こうよ。西村ちゃん。」

　苦笑してお決まりの言葉を返した。

「飲みにかぁ。
　軽く行けないのがつらいところよね。
　みんな車だもの。」

　職場の飲み会も送迎バス付きでないと行くことも帰ることもままならない。

「泊まりがけで行こう！」

　調子に乗ってとんでもないことを言う都築くんに突っ込んだ。

「誰が誰とよ！」

　私の驚きの声は周りの声にかき消されてしまった。

「西村さんと泊まり？俺も行きたい！」

「俺も。」

「俺だって！」

　周りが騒然となって私はおののく羽目になった。
　それを収めたのは倉林支社長だった。

「ンンッ。」

　彼の咳払いに蜘蛛の子を散らすようにみんな業務に戻っていく。
　その様がおかしくて松山さん、河内さんと顔を見合わせて肩を竦めた。

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