デキる女を脱ぎ捨てさせて
「こっちは箕浦瑛斗。
 幼馴染みというか、腐れ縁?」

「おいおい。俺の愛しい親友ってくらいの紹介が欲しいな。」

 肩に腕を回した箕浦さんに倉林支社長は少年のような笑みをこぼした。

 ヤダ……そんな顔も見たことない。

 知らない一面をたくさん見せられて……。
 心臓はドキドキしたまま鼓動がうるさくてたまらない。

「花音さん。ジンは手のかかる奴だけど末永くよろしく頼むよ。」

「あ、いえ。あの。こちらこそ。」

 私は上司と部下として返答したつもりだけど、彼らはそんなニュアンスに思えない。

 だいたい友達に紹介するなんて変だ。
 まるで恋人みたいじゃない。

 自分が思ったフレーズに胸がキューッと痛くなった。
 やっぱり……私、彼のこと……。

 心に浮かんだ想いに首を振った。

 だからって、だからこそ勘違いさせないで欲しい。
 一瞬でも夢を見させないで欲しい。
 夢から覚めた時の虚しさを感じたくないのに。

 彼の思わせぶりな態度に浮かれられるほど夢見がちにはなれなかった。

 彼は空気の読めないイケメン。
 今まで散々それらに振り回されてきたんだから。

< 97 / 214 >

この作品をシェア

pagetop