デキる女を脱ぎ捨てさせて
 もう何千回も何万回も数え切れない人から告白やお誘いを受けていたらいちいち覚えていられない気がしてしまう。

 よく分からないところで感心していると倉林支社長は悪戯っぽい笑みを浮かべて、また戯言を口にした。

「それより君が崇仁って呼んでくれれば全てが丸く収まる。」

 何度目かの空気が読めないイケメン発言に辟易する。

「何の事をおっしゃられてるのか私には分かり兼ねます。」

 だから、振った自覚があるのなら、そんなこと言うのはおかしいっていう自覚も持ってよ!

「その、シャットダウンする時に馬鹿にしたような丁寧な敬語になるのやめてくれない?」

 言葉とは裏腹に楽しそうな彼に私も冗談で返した。

「まさか。
 尊敬している支社長を敬っているんです。
 伝わりませんか?」

 そこまで口にしてふと記憶の中のある部分と倉林支社長の言葉が繋がった。

「というより倉林って、もしかしてあの倉林ですか?
 弟さんって倉林支社長と年が離れてます?」

「あぁ。そうだね。
 ちょうど君と同じくらいかも知れないな。」

 弟を知ってる気がする。
 同級生に確か東京から来た子で……。

「金持ちの息子かどうだか知らないけどって……。」

 私の呟きに倉林支社長はクククッと笑った。

「なんだ弟とも喧嘩してたのか。」

 も、って何よ。も、って。
 あなたとは間違っても喧嘩できる気がしませんけど?

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