君がいるということ
「トイレとかじゃねぇの?」

相嶋『さっき見に行ってもらったけどいないって…。電話も何回もかけてるけど出なくて…。』

「珱、落ち着け。あいつも高校生だからそんなに慌てなくても大丈夫だ。どこでいなくなったか教えてくれないか?」

珱の話によると、みんながトイレに行ってる間、風華は待っていたけど、トイレから出ると居なくなってて女子に念のためトイレを見に行ってもらったがいなかったらしい。風華がマンボウの模型を見ていたと違う班の子から聞いて、その周辺を探している途中とのこと。

「なるほど…。マンボウの模型…。珱、もしかしたらあそこかも。」

相嶋『え?どこにいるかわかるの?!』

「確かではないけど、ここに来たこと思い出したなら縁結び橋エリアにいるかも。」

俺と珱はいるかわからないけど、縁結び橋のところへ足を運んだ。もし、俺との思い出を思い出したのならいるはず…俺は期待をして橋へ向かった。そして、風華は本当に縁結び橋にいて俺は本当に嬉しかった…俺と初めてここに来た時のことを思い出してくれたことに…俺は今、どんな顔をしているだろう。恋する乙女みたいな…恥ずいわ!!


相嶋『あ、いた!!風ちゃーん!!』

「よかったな」

相嶋『でも、何でわかったの?ここにいるって』

「昔、ここに来たことあるからな…。ここで風華とは仲良くなったんだ。」

相嶋『そうだったんだ。』

〜回想〜
俺の親は大手グループの社長の右腕と呼ばれる地位にいて、幼稚園の先生や他の児童の保護者は、どうにか取り入ろうと俺のご機嫌をとってたが俺は、うんざりしていた。4歳の夏、両親は俺の将来のことを考えて一軒家をたてて、近所の挨拶回りに行った。
最後に隣の家に挨拶したのが、風華の家だった。
風華の両親は周りとは少し俺の接し方が違う感じして、俺が外面良くして挨拶したが動じず、俺は戸惑っていた。風華は俺と目が合うと、にっこり笑って一緒に遊ぼうと言ってきたが、引っ越してきたばかりだからと断ったが、幼稚園の休みの日は一日中遊びに付き合わされ、幼稚園では俺の親が迎えに来るまで一緒に行動させられて俺はイライラが蓄積していった。幼稚園が終わった時が唯一の救い…母さんは迎えに来るのが早いからすごく助かった。
引っ越してきて1週間、俺は風華に怒鳴った。理由は蓄積していた怒りと本を読んでいる時に横から入ってきたからだ。

「いいかげんにしろよ!おれはおまえがきらいなんだ、はなしかけるな!!」

風華『ご、ごめんなさい…もうはなしかけないから…ごめんなさい。゚(゚´Д`゚)゚。』

その日から風華は俺に話しかけなくなった。俺は泣いている風華をみて、少し罪悪感を感じたが気にせず読書を続けた。数日後、俺と風華のやり取りを見ていた意地悪すると有名なクラスメイトの男子は風華にちょっかいを出した。

男子意地悪『ふうかちゃんのおむかえって、いつもおそいんだぜ』

女子『えーそうなの?』

男子意地悪『きっと、ふうかちゃんにあいたくないからおそいんだよ』

風華『ち、ちがうもん!!ママとパパは、ふうかのために、いっしょうけんめい、おしごとがんばってくれてるだけだもん。おやすみのときはずっとふうかのそばにいてくれるもん!』

男子意地悪『ぼくのママとパパだって、おやすみのときはずっとそばにいてくれるし、あそんでくれるけど、おむかえもおそくないよ?だけど、ふうかちゃんのママとパパはおそいから、ふうかちゃんのことすきじゃないんだよ』

意地悪男子に言われて風華は身体を震わせて、教室を飛び出していった。俺は気になって風華に気づかれないように後を追った。風華は人気のないところで周りを見て、隅っこに座った。

風華『……。ふうかはおりこうさん…だから…なかない…。だめなのに、なんでなみだとまらないの…』

風華は1人で大粒の涙を流した。教室ではあんなに強気だったのに、俺は初めて風華の一面を見た。俺にあんなにしつこくしてきたのは、俺の家柄とかじゃなくて、ただ純粋に一緒に遊びたかっただけなんだと思った。そして、両親に迷惑をかけないように保育園では、笑顔を見せていたんだ。
その日、珍しく俺の両親も遅く、先に風華の両親が迎えに来て、風華の様子の変化を見て風華の両親が先生に尋ねた。先生は今日の出来事を話して、両親は先生の話を聴くと誇らしそうな笑顔を見せて、しゃがんでうつむいている風華を覗き込んだ。

風母『風華、どうしたの?』

風華『ふうか、おりこうさんできなかった。おともだちとケンカしたの。』

風母『風華はお利口さんだよ。だって、ママとパパを庇ってくれたでしょ?』

風父『パパたちは風華がお利口さんにしてるから、安心して遅くまでお仕事頑張れるんだ。』

風華『パパ…ママ…』

風華は母親に抱きついて、泣き出した。

風母『いつもさみしい思いさせてごめんね。でも、ママとパパは風華さえわかってくれてればそれで十分だから、気にしなくていいのよ。』

風父『パパとママは風華が大好きだから。もう泣かないで、風華の笑顔がパパとママを元気にしてくれるんだ。だから、涙を拭いて笑顔を見せて。』

風華は涙を拭いて、笑顔を両親にみせた。俺はこの家族をみて、早く迎えに来るからとか愛情が薄いとかじゃない気がした。風華の家族は愛情だけじゃなく、お互いに信頼し合っているんだなと思ったら、俺は早く迎えにきてくれていたことに、恥ずかしさを感じた。

その週の日曜日、風華の両親が俺の家族を水族館に誘い、行くことになった。風華は凄く嬉しそうではしゃいでいた。久しぶりに風華の笑顔をみて、俺はつられて笑ってしまったとき、風華と目が合って、風華が声をかけてきたがそらしてしまった。風華はハッとした顔をしてまた静かになってしまった。お昼の時間になり、昼食の前にトイレに行くことになったが、風華はここで待ってると言ってみんなに手を振った。俺たちがトイレを済ませた後、風華の元に戻るとそこには風華はいなかった。みんなは手分けをして風華を探したが、なかなか見つからなくてだんだん俺は不安になってきたとき、恋人との会話が聞こえた。

女『さっきの子、親とはぐれちゃったのかなぁ?』

男『そうだな…。泣きそうな顔してたしなぁ』

女『ちょっと戻ってみる?』

男『そうだな、最近は物騒な事件もあるしな』

「ねぇ!おにいさん、おねえさん!そのこどこでみかけた?!」

女『え?君、もしかして君の知ってる子?』

「たぶん、さっきはぐれちゃったんだ…。」

男『そっか!よかった、たぶんロックリングエリアにいると思うよ。さっきキーロックを渡したから』

「ありがとう」

俺は急いでみんなに伝えて、ロックリングエリアに向かった。風華はロックリングエリアにいて、一人で泣いていた。俺は真っ先に風華の元に向かった。

「はぁはぁ…や、やっと、みつけた…」

風華『ゆうくん…?』

「まいごになったときは、ちゃんとおみせのひとに、つたえないとだめなんだぞ。みんな、しんぱいして…おわぁっ!」

風華『うぇえぇん(TT)』

風華は俺に抱きついて泣き出した。落ち着いた後にどうしてトイレの前から離れたのか風華の母親が聞いた時、俺と仲良くなる方法を考えてるうちに知らないところにいて探したけど、見つからなったところに恋人たちにキーロックをもらってここにきたらしい。風華はただ純粋に俺と仲良くなりたいと思ってくれていたのに、俺はちゃんと風華を分かってやろうとしなかったのかもしれない。

「はぁ…。そんなのにたよらなくても、なかよくなれる。」

風華『え?』

「ほら、なきやんで。えがおがおまえにはにあう。」
俺は風華に手を差し伸べて、風華は笑顔を見せて俺の手を受け入れた。そして俺は風華の笑顔に胸が高鳴り、これが恋なんだと気づいた。その後、風華と一緒に回り、帰りにキーロックを風華達に内緒で買って、トイレに行くふりをして風華のキーロックのところにつけた。

“いつまでもふうかのそばにいれますように ゆうき”

〜回想終了〜
俺と珱は風華のそばまで近づくと、キーロックを見て笑っている。風華が書いた後にキーロックをつけたのを思い出して、それを見て笑ってるんだと気づいた。

「何、笑ってんだよ。」

風華『え?!ゆ、友喜!?何でここに?』

相嶋『あ、風華ちゃん!!勝手に1人でどこかに行かないでよ(*´Д`*)』

風華『あ、やば!!珱ちゃんごめん(*´Д`*)』

「珱、こいつはちゃんと首輪しないと脱走するぞー。脱走常習犯だからな!!」

風華『な、なんですって!!アンタはビビリじゃない!!』

「は?お前がだろ!」

風華『違うわよ!イルカが怖くて触れなかったくせに!』

相嶋『え、友くん、イルカ嫌いなの?』

「ふ、風華てめぇ!」

風華『昔、ここに来た時にイルカのふれあいでなかなかさわれなかったんだよ(^^)イルカに食べられるって(^ ^)』

相嶋『ぷっ!友くん可愛いね^_^』

風華は昔から何も変わっていなくて、ここで俺は風華に恋をして、俺にとってここは大切な場所。

俺はみんなに内緒で柄にもなくまたキーロックを買った。

“風華に俺の思いを伝えて、またふたりで来たい ゆうき”


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