御曹司は眠り姫に愛を囁く
「貴崎さん、顔近いよ」

「え、あ・・・」

画面に顔を近づける私に注意する須藤さん。

「申し訳ありません・・・」

「それ、君の悪い癖だよ」

「以後、気を付けます」

私は須藤さんと顔を突き合わせる。


「これ、FAXしといて・・・」
須藤さんは私に見積書を渡した。

「わかりました」

見積書を受け取り、腰を上げる。


須藤さんは、別れても、何食わぬ顔で、仕事をし、私に指示を与えた。

私の方が、あのお台場での別れを引きずり、彼に対する罪悪感で心が痛んだ。


「FAX終わりました」

私はデスクに戻った、須藤さんに見積書を返却した。

「意識はしないで、普通にしてね。貴崎さん」

「須藤…さん?」

「瑛には俺から話したけど、進展あった?」

「何もありませんよ・・・」

盆休み中は実家に帰省。
椎名さんが隣に住んでいても、顔を合わせる確率は低い。
顔を合わせたとしても、彼とどんな顔で話をすればいいのか分からない。


「君の方から、アプローチしてみれば?」

「そんなコト出来ません・・・」

「君たちにくっついてもらわなきゃ、俺が別れを切り出したのが、無駄になる」

「そう言われても・・・」


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