御曹司は眠り姫に愛を囁く
そして、そのまま室雨さんは、運転席に再び乗り込んで、エンジンをかけた。

後部座席に乗っていた椎名さんは眠っていた。

「支社長、飲みすぎちゃって…この通りお眠りしています・・・」
バックミラー越しに私たちを見て、室雨さんが笑いながら言った。

「みたいですね」

窓際にカラダを寄せていると思ったら、今度は私の方にカラダを寄せてきて、肩に頭をのせて来た。
普段は綺麗に上にあげてセットしている長い前髪は額に落ち、酒と煙草を混じらせた匂いが彼のカラダから香る。

彼の体温が私のカラダにも伝わった。
でも、人肌よりも少し熱い。熱に侵されているかも。

「少し熱いですね・・・椎名さんのカラダ」

「そう言えば、具合悪そうにしていました」

「熱があるんじゃ・・・」

「熱?あ・・・」

室雨さんは、アクセルの踏み込み、マンションの地下駐車場に続く坂を下って行った。


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