御曹司は眠り姫に愛を囁く
失望 瑛side~
父や爺様も兄貴が俺に当主の座と遺産全てを譲るコトに関しては全く反対しなかった。逆に、歓迎していた。

何かがおかしい。

俺は二人の態度に疑問を持つ。



夕食は庭で本家一族揃って、バーベキューパーティが催しされた。



俺は一人で輪から外れ、考えゴトをしていた。


「どうした?瑛。折角、一族全員が揃ってるのに、しけた顔するなよ」


兄貴が俺に缶ビールを持って来て、手に持たせた。

「本当にいいのか?」

「・・・何が?」

「遺産のコトだ。政治活動にだって、金は付き物だろ?」

「周りから集めればいいコトだ・・・お前はともかく椎名家を守れっ」

「兄貴・・・」

「いいから・・・余計なコトは考えるな。瑛」

兄貴は俺の肩を優しく叩き、輪に戻っていった。

俺は缶ビールのプルトップに指をかけて、開けようとした時、Gパンの後ろポケットの中に入れたスマホが鳴った。


ディスプレイの名前に瞳が見開く。

本社の経理部のトップ・中谷部長の名前だった。

「もしもし・・・椎名瑛だ」

――――椎名支社長、お休みの中、申し訳ありません。

「どうした?」

――――椎名支社長に折り入ってお話があります。お休みの所、すいませんが・・・時間、作っていただけますか?


「構わないが・・・」

――――私と会うのに際し、一つお約束頂けますか?私と会うのは社長に内密でお願い致します

父には内密とは・・・

動悸が激しくなり、胸騒ぎが起こる。

「分かった・・・約束しよう」


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