御曹司は眠り姫に愛を囁く
「君は優しいね・・・」

エレベーターには俺と貴崎さんの二人。

「陸翔から全部、訊いたんだろ?」

「・・・訊きました」

「陸翔もバカだ。
俺に嘘をつかせて、貴崎さんにOKを貰い、交際を始めたのに。自分から、嘘をカミングアウトして、別れを切り出すなんて・・・今からでも遅くないだろ?復縁すればいい」


「…私、自分のキモチに気づいてしまいました。
私が好きなのは貴方です。椎名さん」


自分のキモチを偽る俺に、彼女は自身の想いを告げる。


この二年間、俺は貴崎さんのコトばかり気に掛けていた。
俺は彼女の元カレの兄貴。

彼女に恨まれていると思っていたが、それは逆で、彼女は俺に本気で好意を寄せていた。
彼女の告白で、ようやく彼女の本心を理解する。


しかし、このまま父に反旗を翻さず、おとなしくしていれば、俺はいずれ、新規事業を始める提携先の会社の令嬢と政略結婚させられる身。
ここで俺が本心を伝えても、俺たちは別れる。


「・・・君はプライドの低い女性だな。俺は君を無碍に捨てた元カレの兄だ」

「椎名…さん?」


「・・・君に優しくしたのは下心があってのコト。
悪いコトは言わない。陸翔と復縁しろ。
貴崎さん」

俺はワザと冷たい態度を取り、彼女のキモチを拒絶した。

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