御曹司は眠り姫に愛を囁く
「そう言えば、稜が言っていた・・・君は料理が得意だって」
副社長は切れ長の瞳を細め、呟く。

「彼にも何度かお弁当を作りました」

「でも・・・アイツは偏食家だから・・・お弁当のおかずに苦労しただろ?」

「はい」
私は素直に返事した。

副社長は仕出し弁当の蓋を開け、割り箸を割り、ご飯を口に運んだ。

「美味しそうだね・・・その牛肉のアスパラ巻き」

「あ・・・一つ食べますか?」

「いいの?」

「はい。お口に合うかどうかわかりまんせんが。どうぞ」
と彼のお弁当のご飯の端に牛肉のアスパラ巻きをそっと入れた。

彼は早速、私の手作りの牛肉のアスパラ巻きを食べる。


「美味しい。貴崎さんの手作りだよな・・・」

「はい。でも、茹でたアスパラを牛肉でくるくる巻いて、フライパンで炒めて、焼き肉のたれで味付けしただけですよ」


「味付けは焼き肉のたれか・・・美味い」

「もう一つ食べますか?」

「遠慮なく貰うよ」

副社長は照れ臭そうに笑う。私はまた、ご飯の端に牛肉のアスパラ巻きをおいた。



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