御曹司は眠り姫に愛を囁く
「俺と同じで優秀なお前が居てくれて良かった・・・最近はしっかりしたと言え、稜ではまだ役不足だ」

「兄貴は以前から父の誤魔化しを知っていた様な素振りだな」

「俺は何も知らなかった。俺に相談してきたのは、曾爺様だよ。
尊に任せていたら、『シーナ』は潰れると。俺は『シーナ』の経営にはノータッチだ。
まぁ、経済が低迷している中、経営は余り良くないだろうと思ってたけど。
俺は親父に事実を確かめる前に、曾爺様と話をして、遺言状を書き換えた。
遺産を会社に食いつぶされるのを阻止する為に。そして、俺が曾時様の亡きあと、椎名家の当主に就いた」

「・・・」

「親父も親父に加担した爺様も改心して、全員で椎名家を守ろうと言う話をして、曾爺様の残した中東の土地で新規事業を計画した」


「提携会社と共同開発とは言え、石油を採掘するのに、どれだけの費用が掛かると思ってる?
石油は後30年ほどで、枯渇してしてしまうと言われている。そんな資源を採掘するなら、新たな資源を・・・次世代エネルギーを開発した方が・・・」

「調査によれば、曾爺様の買った中東の土地の石油の埋蔵量は凄いらしいぞ。詳しいコトは親父に訊けばいい・・・」

「・・・」

「中国の民間企業だって、中東の石油採掘に乗り出している。俺達の国だって・・・」

「遅れをとるなと言いたいのか?」

「そうだよ。そういうコトだ」

「まるで、国営の事業みたい言い方だな・・・」

「それはお前の想像に任せる」
兄貴は不敵に笑い、ソファから腰を上げた。

「じゃ俺は帰る」
俺は兄貴をエレベーターホールまで見送った。
唯の新規事業ではないと言うコトか・・・そして、俺の政略結婚は益々濃厚化して来た。




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