御曹司は眠り姫に愛を囁く
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来週に差し迫ったコンペに準備で帰宅は深夜を回った。
1階のエレベーターホールで顔を合わせてしまった。
「残業ですか?」

「今夜は会食だ」

「へぇー」

「君は残業?」

「はい、来週の行われるコンペの準備で」

「ふうん」

椎名さんから漂うお酒の匂い。
昨日の今日なのに、私達は普通に会話を交わしていた。

「来たよ」

「はい」

私達は同じ金属の箱に乗り込んだ。

「あの・・・椎名さん」

私は扉が閉まってすぐさま話を切り出す。

「何?」

肩を並べて立つ椎名さんは顔だけを私に向ける。
ほろ酔いで疲れたような表情。
「どうして私に『愛してる』なんて言ったんですか?」

「君、起きてたの?」

椎名さんの顔が驚きで引き攣る。

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