御曹司は眠り姫に愛を囁く
「そんなコト言われたら…私・・・」

私は彼に恋情を断ち切ってくれと頼んで、身を預けた。なのに、彼は・・・

「私のキモチに同情なんてしないで下さい!」

「同情なんかじゃない!俺は本気で凛音のコトがスキなんだよ!」

「椎名…さん?」

「でも、俺は・・・
俺の見合いは断るコトが出来ない。俺のキモチとは裏腹に話はどんどん大きくなる」

「・・・」

「俺の肩に椎名家と会社の運命が圧し掛かっているんだ・・・」
彼の思い詰めた声に胸が締まる。

やはり、彼は耐えきれない重圧に苦しんでいた。

「椎名…さん。私・・・」

「ゴメン・・・俺…やっぱり、君を抱けない・・・」

重い空気の中、軽快に弾むエレベーターの停止音。
彼は切なげに歪む顔を手で覆い、先に飛び出した。
「待って下さい。椎名さん」

私も降りて、彼の背中を追う。

隣同士の部屋。
今の彼を一人にはしておけなかった。

「何だよ!?」

「私の部屋に来ませんか?」

私は彼を部屋に誘った。


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