御曹司は眠り姫に愛を囁く
「友人がイギリスに旅行に行って、お土産に紅茶をくれたんです」

「今夜の俺は君に何するか分からないよ」

「・・・構いません」
椎名さんは誘われるままに部屋に入った。

彼の部屋とは比べ物にならない位無駄な空間が広がる。

「どうぞ」

私は彼に紅茶を出した。

「コーヒーよりも紅茶の方がカフェイン多いって知ってた?」

「そうなんですか?知りませんでした」

ソファに腰を下ろし、紅茶を喉に通した。

「今日会社に兄貴が来たんだ」

「兄貴ってあの椎名衆議員ですか?」

「そうだ。今、リフォームしている俺の部屋には住まないそうだ。
全く、兄貴は昔から自分勝手な男だ。
俺と見合い相手の新居にしろってさ」

椎名さんはやけっぱちに吐き捨てると紅茶を口に含んだ。

「それに、わが社の新規事業には国が絡んでいるようだし、俺はどんどん追い詰められてどうしようない。会食なんてさっきは言ったけど、本当は『プラチナ』に行って飲んでた」

「椎名さん・・・」

「稜と別れた時、何も考えず、強引に君を奪っていれば良かったのかな?」



< 158 / 171 >

この作品をシェア

pagetop