御曹司は眠り姫に愛を囁く
「その顔を見ると君はお見合い相手の顔を見ていないようだね」

「瑛さんは見たんですか?」

「ああ~見たよ。
見るまでは色々と心の中で葛藤があったけど。
意を決して見た。すると・・・凛音だったから・・・心底驚いたよ」

「知ってるなら、教えてくださいよ。意地悪ですね」

「凛音もちゃんと俺の写真を見てるかなと思ったから、あえて言わなかった」

「見てませんよ。受け取りも拒否しました」

「おいおい、これから連れ添う相手だぞ。ちゃんと見ないと」

瑛さんは半分呆れたような口調で言うと足を組み、コーヒーを口に運んだ。

私は瑛さんのコトはきっぱりと忘れて、今日の相手を愛そうと心に決めて、この場所に来た。

でも、私のお見合い相手は瑛さん。

シワ一つないオーダーメイドの紺のスーツに身を包み、シャツとネクタイは同系でまとめていた。

「どうした?」

「私、瑛さんのコト、忘れなくてもいいんですね・・・」

ずっと忘れよう忘れようと思っていた彼に対する想い。


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